続きは、社長室で。2
私に動くなと言わんばかりに一瞥して、どこか慌てた素振りで車から出て来ると。
バタンッ――
そのまま荒々しく車のドアを閉めてから、こちらへと駆け寄って来るヒト。
その刹那、私の足は地面に張り付いたように固まって動けなくなっていた。
どうしてこのヒトは、この地にいるの…――?
「蘭ちゃん、良かった!」
「っ…、さ、くらいさん、ど、うして…?」
「あぁ…、とにかく車に乗ろうか?」
片言ながらも必死で紡ぎ出した言葉の意味を、彼は理解してくれたらしい。
コクンとひとつだけ頷いてから、誘われるままに車へと近づいて行く…。
「っ…、この、車って…」
そこでようやく、車全体のシルエットとエンブレムが見えて呟いた…。
真夜中に貴方が迎えに来てくれた、アウディだったから…――
「そう、これは拓海の車なんだ。
空港まで同行して、俺が帰りは乗って来てね?」
「っ・・・」
ブワッと込み上げるモノを堪えようと、必死で歯を喰いしばる私。
どうして運転主の貴方が、此処にイナイの――?
「蘭ちゃん、とにかく急ぐから乗って!」
そう急かされて車内へと乗り込むと、アウディは軽快な走行を始めた・・・