続きは、社長室で。2
私はすぐにでも、拓海の許へと駆けつけるつもりをしていた。
だけれど、社長秘書の桜井さんは行かないの…?
そんな疑問符が取り巻いて、どうしてもすぐに返事を出来ずにいれば。
「俺はその間に、拓海の代理をしなければいけない。
だから、今回の出張も同行していないんだ…ゴメンな?」
「っ・・・」
優しく宥めるような口調に、此処でも自身の浅薄さが際立ってしまう。
拓海のブレーンと謳われる彼には、今でさえ大変な迷惑を掛けているというのに。
“ゴメンな”の言葉が、“同行しなかった”コトへのお詫びだと伝わって来て。
彼のせいじゃナイのに、私は何処かで責めていたのかもしれない・・・
「っ…、ありがとうございます…」
そう告げてからシートから身を浮かすと、彼の方へと身体を曲げていた。
「どうして?」
私の突然の一礼に、フッと口元を緩ませて一笑する桜井さん。
「たく…、いえ、社長の代わりにお礼を言わせて下さい。
社長が戻るまで…、会社の方をお願い致します…」
紡ぎ出した言葉は、綺麗ごとや社交辞令なんかではなくて。
元社長秘書として…、そして東条の人間として、自然と発していたのだ。
愛おしいヒトがビジネスパートナーとして、絶大なる信頼を寄せる彼に…。