続きは、社長室で。2
やけに長く感じたフライトも、ようやく目的地を捉えて解放のトキを迎えた。
到着した地は、海外とはいえ位置的に航空時間が短いと思われる場所であり。
飛行機を降りた瞬間から潮風の匂いが漂う、サイパンだった…――
桜井さんから指示を受けた通り、税関を越えて辺りをキョロキョロ見渡す私。
「佐々木さん!」
「え、と…」
呼び掛けられて後ろを振り返ると、Tシャツ姿のラフな男性の姿を捉えて。
名前を教えて貰い忘れたコトを、今頃気づく羽目となり戸惑っていれば。
「あ、名乗りもしないでゴメン!
俺はロス支社の杉本(スギモト)です」
「私こそ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません…。
どうぞ宜しくお願いいたします」
そう言って深々とお辞儀をしたあと、口元をムリヤリ引き上げて笑った。
絶対に泣いたりシナイ…、元気な貴方に会うまでは・・・
「さすが、社長のお相手なだけあるね…?
桜井の言っていた通りだよ」
「・・・え?」
「何でもない…、それじゃあ早く行こう?」
「っ、はい・・・」
何だか誤魔化されてから、私のバゲージを手に取って先導する彼に続いた。
息苦しい現実を踏み締めて、愛おしい貴方の許へ向かったの・・・