続きは、社長室で。2
私が行かないと駄々をこねれば、杉本さんもホテルへ戻れないよね…。
これこそ、ただの我が儘でしかなくなるから…――
「それでは、宜しくお願いいたします」
「うん、行ってらっしゃい」
ニコッと笑顔で彼に一礼してから、最後に眠り続ける拓海を一瞥すると。
病院を出てタクシーに乗り込んで、滞在する病院近くのホテルへと向かった私。
ジリジリと燃えるように暑い、日本では感じられない日差しの強さ。
ザザン…と、絶え間なく波が打ち寄せる、マリアナブルーの海の景色。
陽気にピッタリの現地の人や観光客の笑顔を、車内から眺めつつも。
まったく笑顔を零せず、異国のサイパンにいるとは思えないでいたの・・・
元気なタクシー運転手さんにお礼を言って、ホテルの入り口付近で降車すると。
杉本さんが予めチェックインを済ませてくれたお陰で、そのまま部屋へと向かう。
ガチャッ――
ルームキーを挿して開錠すると、少しだけ重みのあるドアをゆっくり開く。
シンプルでいて格調高い丁度品と、南国を思わせる明るい花々に出迎えられた。
室内を進んで行けば、ウェルカムフルーツがテーブル上で芳醇な香りを放つ中で。
「・・・っ」
本来は拓海が宿泊するハズだったスイートの様相に、視界が霞みそうになる。