続きは、社長室で。2
きっと僅かな余暇を、此処で癒されるハズだったのに…。
此処に在るべき滞在者が、どうして病院で苦しんでいるのよ・・・
「・・・っ」
今にも瞳から零れ出しそうな涙を抑えようと、慌てて歯をグッと噛み締めた。
そんな苦しみから逃れたくて、預かったバゲージからお洋服を取り出そうとする。
「どう、して…?」
理沙子さんから預かったらしいバッグの中身を見て、そう呟いてしまった…。
このバゲージに詰められていたのは、すべてがFOXEYのお洋服ばかりのうえ。
バッグの奥底に仕込まれていた封筒を、手に取って開封してみれば。
東条家の家紋入りの便箋は、綺麗すぎる字で埋め尽くされていた・・・
【 蘭ちゃんへ――
貴方たちが苦しんでいるのに、傍にいてあげられずにごめんなさい。
だけれど大丈夫だと信じているから、こちらで帰りを待っております。
それと、本当は直接渡したかったけれど叶わないので…。
東条家に代々受け継がれてきた指輪を、手紙に同封させて頂きました。
これを填めて、最後まで頑張って欲しいと思っています。
どうか拓海の事を、最後までお願いしますね。
貴方たちの母こと、理沙子より】
「っ、ひっ、く・・・」
悲しみ、嬉しさ、苦しさ…、もう訳が分からないくらい。
あんなにも必死で堪えていたハズの涙が、止め処なく溢れていく・・・