続きは、社長室で。2
ヒトというのは、欲張りな生き物なのかもしれない――
拓海が無事であれば命を捧げても構わナイ…、一筋に願い続けていたけれど…。
祈りが神様に通じて、何よりも大切で愛おしいヒトとの対面を果たせたのに…。
また次の願いを追い求めてしまうのは、悲しい人間の性なのでしょうか・・・
「さ…、桜井部長から指示を受けて、今回は私が同行しておりました…。
混乱を招かせてしまい…、申し訳ありません…」
気づけば小刻みに震える声色で、深々と一礼をして取り繕っていて。
“貴方の秘書…”
あながち間違ってイナイ言葉だけれど、それは過去形の話でしかなく。
今はもう、貴方との結婚に向けて歩み始めている真っ只中だというのに。
それでも私は…、対峙する貴方の表情が怖くて仕方無かった・・・
「社長…、私の冗談がすぎたようです…。
貴方の“大切な”秘書という意味合いで、つい・・・」
「・・・っ」
私の心情を察してくれたのか、それまで黙っていた杉本さんが口を開くと。
「いや…、場を和ませようとしただけの事でしょう?
それより佐々木さん…、俺の方こそ申し訳なかったね――」
「・・・っ」
彼と私を交互に一瞥したあと、ようやくフッと一笑した拓海。