続きは、社長室で。2
愛蔵の、始まり。
ようやく会えた貴方とのキョリが、二度と広がらない為に告げた言葉。
それが“社長と秘書”という、逆戻りとなるモノだとしても。
必死に選んだ道は、貴方の傍にいるための最終手段だったから・・・
あれから杉本さんが、日本で待つ桜井さんや理紗子さんに連絡をしてくれて。
拓海の記憶障害と私の“事情”について、すべてを告げたのだけれど…。
記憶を失った拓海と忘れられた私の接触には、医師が随分と危惧していた。
初めこそ戸惑っていたけれど、私が必死で秘書の役に徹していたからか。
拓海の様子を見る限り、大丈夫であろうとの見解を最終的に下された。
ただの秘書として通し抜けば、問題はナイであろうと・・・
「我が儘なお願いとは承知しておりますが…。
どうか復帰をさせて頂けませんか…?」
「蘭ちゃん・・・」
無事帰国と相俟った前日、桜井さんに直接連絡を入れた私…――
電話越しだというのに、いつしか身体を曲げて一礼をしていたほど必死で。
支離滅裂だとは分かっていながら、それでも信念だけは曲げたくなかった。
もう二度と離れたくナイ…、その想いが駆け巡っていたから・・・