続きは、社長室で。2
診断直後の頃は、状況を受け入れる辛楚さに押し潰されそうだった…。
愛おしいヒトを前にして、何処までも果てしなく遠くに感じてしまって。
他人行儀な振る舞いをするコトが、あまりに息苦しくて泣いてしまいたかった。
それでも弱い私を奮い立たせてくれたのは…、愛おしい貴方だったの…――
「佐々木さん・・・
サイパンにいながら病院通いをさせて、申し訳ないな…」
「っ…、い、いえ…!
私は社長が良くなって下さるのなら、どんな事でも致します」
「フッ…、ありがとう」
「・・・っ」
“眼前に何よりも大切な命がある”と…、一番大切なコトを気づかせてくれた。
「それじゃあ、気をつけて帰って来いよ?
コッチで“2人の帰り”を待っているから」
「っ、はい、ありがとう…、ございます!」
桜井さんのエールを受けて電話を終えると、バルコニーへと向かって行く。
本来の主を迎えるコトなく滞在を終えた、スイートルームからの景色を一瞥する。
私という存在を忘却して…、このまま思い出せなかったとしても。
ゼロ地点に舞い戻った事実に嘆くより、未来を信じて傍に居続けたいの…。
愛しい清涼な声で再び、“蘭”と呼んで貰えるように・・・