続きは、社長室で。2


貴方を愛するがゆえに、何よりも大切な感情を封印させてしまうけれど。



もう一度、ブラウンの瞳が優しい色へと変わって欲しいと願いながらも。




貴方にとって私が、再び特別なヒトとなれる日を待ち続けたい・・・





殆ど眠れないまま夜明けを迎え、重い身体を起こしてシャワーを浴びた私。



キモチを奮い立たせるように、メイクとヘアスタイリングに力を入れて。



寝不足と不安の入り乱れたような顔つきを、カムフラージュしていく…。




最後にFOXEYの七分袖ジャケットに、シフォンワンピースを纏ってしまえば。



貴方の秘書として申し分ナイと思われる、偽りの姿と鏡面で対峙した。




雄大で美しい景色…、絢爛豪華なスイートルーム…、それら何もかもが。



拓海という存在ナシには、まったく無意味なモノだと悟った1週間だったね…。




最後にミネラルウォーターで喉を潤わせて、静かにスイートを退出すると。



ザザンと打ち寄せる波音を感じつつ、ルブタンのヒール音を響かせて行けば。



予定時間よりも早く、愛おしいヒトが待つ病院へとタクシーで向かった…。





「社長、おはようございます…」


「あぁ、おはよう」



大丈夫…、愛おしいヒトに、たとえ愛想笑いでも与えて貰えるのなら…――




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