続きは、社長室で。2
それでも貴方の隣にいたいと申し出たのは、私の我が儘であって。
もう二度と傍を離れナイと誓いを立て、笑顔を絶やさないと決めたから。
「しゃ、社長にそう仰って頂けて、すごく嬉しいです…」
震えそうになった声を押し切って、顔にはニコリと笑顔を張りつけた。
“可愛いよ…”
これが拓海として貰えるのならば…、迷わず眼前の胸に抱きついてしまうのに。
一切の記憶を失われた今は、貴方の秘書でしかナイもの・・・
「ハハッ、佐々木さんも上手だな」
「そんな・・・」
私を見下げて一笑すると、いつもは頬を包み込んでくれる手が肩にそっと触れた。
骨ばった感触を服越しとはいえ、久々に感じたコトでドキリと高ぶる鼓動…。
この感情を止める手立てなど、どうにも見つけられナイというのに・・・
「どうして君を忘れたんだろうな…、俺は・・・」
「・・・っ」
肩からスッと離された手を力なく宙を彷徨わせながら、こちらを捉える拓海。
入院中には決して見せなかった、ポーカーフェイスが崩れた気がして。
芯のあるブラウンの瞳も危うさを漂わせるから、掛ける言葉が見つけられなかった…。