続きは、社長室で。2
久しぶりに鼻腔を掠めゆく、甘いホワイトムスクの香りにホッとしていると。
「本当に、悪かった…」
「い…、いえ…」
泣かせてしまった罪悪感からか…、しなやかな指で髪を撫でられていた。
その所作に髪1本ずつに、細やかな神経が通っているようにドキドキが増していく。
「それなら…、ありがとうかな?」
「・・・っ」
謝罪でなければお礼かな?と、フッと一笑した清涼な声色が鼓膜を擽った。
トクン、トクン…、と1週間ぶりに感じた、拓海の鼓動が安心感を齎す中で。
触れられるコトにも嬉々として、身体が拓海を欲しているコトは明らかで。
ドキドキと囃し立てる鼓動は、どうしようもナイほど眼前の彼を求めていた。
戒め続けていた心とは裏腹に、身体だけは言うコトを聞かないかのよう・・・
「しゃ、社長…、ありがとう、ございました」
そんな自身に喝を入れて、お礼を告げるとようやく拓海とのキョリを取った私。
忘れられたという事実は辛くて仕方がナイ…、でも立ち止まっていてはダメだ。
不安に駆られていたトキの辛さを思えば…、もう怖いモノなどナイ気がするの。
だからね…、そのトキを信じて、貴方の傍を絶対に離れたりシナイ・・・