続きは、社長室で。2


自宅に戻って2人が再会したトキ、親子での熱い抱擁を交わしていて…。




“良かった…、お帰りなさい”


お家の中という安堵感からか、ギュッと拓海を抱き締めていた理沙子さん。



“…ただいま”


そんな彼女の背中をポンポン叩きつつ、とても優しい表情を見せた拓海。



ソレはとても温かく、愛しさの一杯詰まった空間へと早変わりする威力があって。




「・・・っ」


だけれど、一方では私との再会とはチガウ様相に、グッと心が締めつけられた…。




もし覚えていてくれたのなら、私にもしてくれた…――?



私も抱きつきたい…、抱き締めたい…、そんな想いだけが募っていた…。




「“そのトキ”が来るまで、こちらを頂く権利はございません…」


「蘭ちゃん…、そんなの…」


一礼をすれば、ひどく残念そうな表情を見せてくれる理沙子さん。



すべての事情とキモチを察しているからだろう、言葉を選んでいる節がある。



いつでも何処までも優しいところは、やっぱり拓海と同じだね…。




「今は…、頂いてはダメなんです…」


あんな浅ましさを抱いて…、大切な指輪に縋りつく弱い自分がいるからこそ。




だからこそ…、真っ白な状態に戻るのがベストだと思ったのだ…――




< 163 / 226 >

この作品をシェア

pagetop