続きは、社長室で。2


だけれど拓海を信じ抜く前に、まずは私が一人立ちしなければならない。



貴方が何よりも大切だからこそ…、まずは信念を貫かなきゃダメよね・・・





「それでは、私はこれで失礼させて頂きます。

本当にありがとうございました…」


「いいえ、こちらこそ」


向かいの席に着く理紗子さんに目配せをして、席を立って一礼をした。




「社長、ゆっくりご静養下さいね…?」


「あぁ、態々ありがとう」


ドア付近に佇む社長の拓海に近づけば、清涼なブラウンの瞳と合致して。



「…いえ、明日からどうぞ宜しくお願いいたします」


「フッ…、こちらこそ」


「っ・・・」


万人に向ける表情で一笑されれば、やはりチクンと心は痛むけれど。



貴方に特別な笑みを見せて貰えナイのなら、私がその分笑えば良い…。




こうして笑えた分…、いつか拓海が返してくれるハズでしょう?




だから一時の鈍い痛みなど、絶対に悟られてはイケナイの・・・




ガチャッ――

リビングのドアを遮蔽すると、そのまま静かに花に囲まれた東条家を退出した。




一歩、一歩、庭園の花々が咲き誇る中を進んで行けば、あるモノが目に止まる。




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