続きは、社長室で。2
ソレは絢爛豪華に生い茂る木々の中で、思わず屈んでしまうほどの小さな鉢のコト。
お花に詳しくナイ私でも分かる、細々と咲いているサザンクロスだ・・・
濃い緑色をした小さな葉の中に、星の形をした薄いピンク色の花が咲いていて。
ミカン科の植物のため、葉に触れれば仄かな柑橘系の香りが纏わりついてくる。
この香りを嗅ぐ度に後藤社長が浮かんで、もう好きではなくなったのに…。
小さな頃に母から教わった“花ことば”が、キライになれない要因よね…?
指を伝って掠めていく香りとともに、足早に自宅へと戻って行った…――
「おはようございます、社長」
翌日は専属運転手さんとともに一礼をして、以前と同じ時刻に待つ私。
「あぁ、おはよう」
自制する前に、ドキッと高ぶってしまう鼓動が煩く感じながらも…。
どんなに抑えようとしても、本心には逆らえナイみたいだね・・・
実は桜井さんが頭を打った拓海に配慮して、暫くは彼の運転を禁止した。
運転好きの拓海には、その気遣いがあまり嬉しくないようだけれど…。
「佐々木さん、どうした?」
「あっ、申し訳ございません!」
バタンッ――
ハッと我に返って黒塗りの車へと乗り込めば、そのまま静かに発車し始めた…。