続きは、社長室で。2


ソレは絢爛豪華に生い茂る木々の中で、思わず屈んでしまうほどの小さな鉢のコト。



お花に詳しくナイ私でも分かる、細々と咲いているサザンクロスだ・・・




濃い緑色をした小さな葉の中に、星の形をした薄いピンク色の花が咲いていて。



ミカン科の植物のため、葉に触れれば仄かな柑橘系の香りが纏わりついてくる。



この香りを嗅ぐ度に後藤社長が浮かんで、もう好きではなくなったのに…。



小さな頃に母から教わった“花ことば”が、キライになれない要因よね…?



指を伝って掠めていく香りとともに、足早に自宅へと戻って行った…――







「おはようございます、社長」


翌日は専属運転手さんとともに一礼をして、以前と同じ時刻に待つ私。



「あぁ、おはよう」


自制する前に、ドキッと高ぶってしまう鼓動が煩く感じながらも…。



どんなに抑えようとしても、本心には逆らえナイみたいだね・・・




実は桜井さんが頭を打った拓海に配慮して、暫くは彼の運転を禁止した。



運転好きの拓海には、その気遣いがあまり嬉しくないようだけれど…。




「佐々木さん、どうした?」


「あっ、申し訳ございません!」



バタンッ――

ハッと我に返って黒塗りの車へと乗り込めば、そのまま静かに発車し始めた…。




< 166 / 226 >

この作品をシェア

pagetop