続きは、社長室で。2
以前なら手帳を手にしつつ、ババッとスケジュールを伝えていたというのに。
ブランクとも言えないお休みが、さらに半人前度を上昇させたようだね…。
拓海に気づかれないよう、フゥと深呼吸にも似た溜め息をひとつつくと。
先ほど専属運転士さんを通じて、桜井さんから預かったスケジュール帳を開いた。
「それでは、本日の予定でございますが…。
っ――・・・」
パラパラと手帳を捲りながら、今日の予定を伝えるつもりだったのだけれど。
記載されていたモノの威力によって、紙に触れる指がカタカタ震え出した…。
「…どうかした?」
「っ…、い、いえ!」
手帳を手にしたまま言葉を失っている私に、拓海が窺うように話し掛けてきて。
ビクッと肩を揺らして驚いてしまったけれど、どうにか頭を振って笑い返せた。
「ほ、本日の午後…14時に…、T、S商事の…ご、とう社長と・・・」
そうして用件を伝えようとするのに、上手く開口せず声が上擦ってしまう。
“TS商事の後藤社長と、14時の約束にございます”
秘書として割り切って、サラリと言いのけなければならないのに…。
「あぁ、そう言えば約束してたな…」
「…っ」
思い出したように頷く拓海の態度で、私はやはり忘れられた存在だと悟る外なく。
迫り来る後藤社長との再会には、ひたすら恐怖心が募っていた・・・