続きは、社長室で。2
私自身が、この状況に戸惑っているのだから・・・
“社長の召し使いじゃなかったの?”
“それとも朝イチのドッキリとか?”
「ッ――」
こうして周囲に晒されれば、居た堪れなさが募ってしまう。
繋がれた手の感触は温かいのに、それさえも蝕まれるようで。
チクン、チクンと、鈍い痛みが蠢いて(うごめいて)いく。
これから先を思えば、大した誹謗でもナイのにね…?
「いずれ…、正式発表しますが――
この度、彼女と結婚する事になりましたので…」
え…―――
その清涼な声に驚いて、思わず彼の顔を見上げてしまった。
「っ・・・」
一瞬だけ重なったブラウンの瞳が、あまりにも優しい色をしていて。
歪みそうになる視界を保とうと、グッと歯を喰いしばった私。
「突然驚かせて、申し訳なかったですね…?」
手を引いたまま、シンと静まり返ったフロアに謝辞を述べる拓海。
社長であろうと、何であろうと、拓海は拓海だと思えた・・・