続きは、社長室で。2
愛おしいブラウンの瞳は逸らしたくなるほど、真っ直ぐに私を捉えていて。
頬を包むようにして離れナイ大きな手が、問い掛けから逃してはくれナイ。
静かなエンジン音で走行する車内では、ピンと張りつめた空気が流れてゆく…。
「…な、泣いたりしません…。
ほ、んとに…ちょっと寝不足で――」
「この顔を見て、心配しない方がおかしいだろう。
それとも俺が心配するのは…、迷惑だった?」
綻びだらけの言い訳を封じるように、重ねられた言葉と哀愁を帯びた瞳。
ソレが思わず片頬に置かれた手に縋りそうな程、キュッとした痛みを作り出す…。
「…っ、い、いえ・・・
っ、社長にご心配頂けて、光栄ですし…嬉しいく思います…。
ですが、本当にただの寝不足ですので…」
それでも“誓い”があるから、笑って誤魔化すコトが私のプライド。
いま貴方を苦しめた分だけ笑顔を見せて、1人でも強くなる為に…――
「…分かった、無理はしないでくれ」
ひとつ呼吸を置いたあと、ようやく納得して頬から手を離してくれた拓海。
包まれていた熱はスーっと冷めて、代わりにエアコンの風が頬を掠めていくけれど。
「はい…、ご心配ありがとうございます。
今日からまた…、宜しくお願い致します」
此処で泣いてはダメ…、これからが本当の戦いだから…――