続きは、社長室で。2
泣けば貴方を困らせるだけ…、泣いても何かが解決する訳でもナイもの…。
今は貴方の傍で笑顔で居続けるコトが、必須条件でしょう・・・?
あれからどちらも口を開くコトなく、私は車外の流れゆく景色を眺めていた。
マリアナ海溝に囲まれた、雄大な自然を感じられるサイパンとは打って変わって。
近代的でありつつ、どこか無機質さを感じるビルが立ち並ぶ窮屈な都会の様相。
すべてにおいて不自由とは無縁だけれど、願いを消し去りそうな空気を感じた…。
そんなネガティブ思考へ陥りそうな自分を戒める為に、フルフルと頭を振ると。
シートに深く腰を下ろして、持参した書類に眼を通す拓海をチラリと窺った。
すると彼は、運転出来ないフラストレーションを仕事に向けているかのようで。
威圧感を纏いつつ、光沢を放つシルバーのネクタイを締める姿に圧倒されるだけ。
今の拓海を愛おしいと思うコト自体、今の私には憚られるほどに…。
大都会のビル群の中において、シンプルながらに異彩を放つ建造物。
これこそが、まさに悠然とそびえ立つ“拓海キャッスル”だ・・・
バタンッ――
車外へ出たあと、高級車特有の鈍い音を響かせて後部座席のドアを閉めた。
「よし、佐々木さん行こうか?」
「はい…」
半人前の私だけれど、貴方の傍にいられるように頑張るから…――