続きは、社長室で。2
辛苦の、始まり。
これから踏み出すと決めた道の正否など、当然の如く分からナイ。
私の出した結論によって、2人の未来にズレが生じるかもしれナイ。
それでも貴方を信じているから、眼前の恐怖に打ち勝てる気がするの…――
久方ぶりに思えてしまう拓海キャッスルの中へと、2人で足を踏み入れた。
出勤時間帯でガヤガヤ煩いロビーも、社長のお出ましにシンと静まり返って。
拓海の革靴がコツコツ…と、不揃いに私の高ヒール音もカツカツ…と響いた。
だけれど直ぐに、どこか懐か敷く思う中傷紛いのヒソヒソ声が耳に届いてくる。
“えっ、何で佐々木さんが?”
“イヤミで来たのかしら?”
“ナニかをしに来たんじゃねぇ?”
“えー、婚約して…”
「…っ、おはようございます!」
「…佐々木さん?」
危険なフレーズへと及びそうになり、私は大声で挨拶をして一礼をした。
一気にシーンと静まり返る中で、拓海を尻目に頭を下げ続けていると…。
「お…、おはようございます」
「また、よろしくお願いいたします」
ポツリと返された挨拶のお陰で、ゆっくりと頭を上げた私はニコリと一笑する。