続きは、社長室で。2
周囲に取り繕うコトが、どれ程大変なのかを少しは感じていたから。
ソレを察していて、サラリと緩和してくれた桜井さんに心から感謝したの。
あとは拓海に気づかれナイよう…、コレが最も難しいのだけれど…――
未だシンと静まるフロアを闊歩して、3人でエレベーターに乗り込んだ。
2人きりのトキとは違い、1人増えただけでさらに窮屈さを覚える密室内…。
「まさか、祐史に迎えられるとは…。
これから大雨でも降るかな?」
動き出した箱の中で、フッと自嘲しながら桜井さんに話し掛けた拓海。
信頼する彼への態度を見つめていれば、やはり忘れられたのは私だけ…。
拓海にとって“私以外のトキ”はすべて、何も変わっていないと知らしめる。
「ハッ、今週の天気は晴れマークがズラリだろうが。
大体オマエじゃなくて、蘭ちゃんを迎えに行ったんだよ!
約束してたしね、蘭ちゃん?」
すると拓海を鼻で笑ったあと、こちらを窺うように首を傾げる桜井さん。
「…そうなのか?」
「っ…、え、まぁ…」
その状況へ割り込むように、ブラウンの瞳がジッと私を見下げて来て。
桜井さんの手前、コクンと頷きながらも曖昧な返答をしたのだけれど。
「へぇ・・・」
近づくキョリがホワイトムスクの香りを強めて、ドキリと鼓動が高鳴った。