続きは、社長室で。2


密室内で容易く私を誘引するのは、拓海の香りだけだと思い知らされていく。



入り混じるハズの桜井さんの香りが皆無な程、ホワイトムスクで満たされるから。



甘くて爽やかな香りは、連鎖反応の如くドキドキと囃し立ててしまう…。




「こんなヤツと仲が良いんだ?」


窺うように覗き込んでくる拓海に、耐えられずにボタンへと視線を落とせば。



「こ、こんなヤツって、そんな・・・

桜井部長は、素敵な上司さんだと思います…」


窮地を救ってくれた。桜井さんのフォローをしなければとの思いで答えた。



「ハハッ、蘭ちゃんありがと!」


私たちの傍らでひとり笑いながら、我関せずといった様子の桜井さん。




「…何か、悔しいな」


「え…っ――」


いつの間にかさらにキョリを縮められ、トンと箱型の壁に手をついた拓海。




「何か、気に入らない…」


「っ・・・」


どこか真剣なブラウンの瞳が、ただ一点にこちらをジッと見下げていて。



スーツに触れてしまうほど迫られたキョリを、どうにか広げようとしても。



エレベーターのボタンを操作する場に位置する私には、動き様子もナイのに…。




お願いだから…、その眼差しを向けたりシナイで・・・?




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