続きは、社長室で。2
どんな仮面を纏っていようとも、その下の人物は変わらない。
私が大好きだった拓海は不変なのだと、今頃気づいたの・・・
そのまま私たちはエレベータに乗り込み、再び2人きりとなる。
箱型の密室空間に漂うのは、ホワイトムスクの爽やかな甘い香りで。
堪えていた涙が伝い落ちるほど、気を緩めてしまう作用があるの。
「っ・・・」
どこまでも情けない自分に嫌気がさして、悔しくなってしまう…。
すると繋がれたままの手に力が込められ、キュッと指を絡め取られて。
ドキッと高ぶる鼓動を窘めつつ、遥か頭上を見ると儚げな視線と交わった。
「…アレが、今の俺の限度だ。
ごめんな、蘭・・・」
「ッ・・・」
謝罪の言葉以上に眼前で見せた表情が、私の心をグッと締めつける。
いつ何時であろうとも、冷静沈着で泰然としている拓海。
その彼の顔つきが、今はあまりにも弱々しく思えてならない。
私が泣いたせいで、きっと罪悪心に苦しませているのよね?
今もなお頬をツーと伝い落ちる涙は、彼を苦しめるだけ・・・