続きは、社長室で。2
だけれど恐怖に屈するコトなど、もうしたくもナイ・・・
キモチとは裏腹な本心によって震える手を、キュッと固く握り締めてから。
手鏡を持ってメイクとヘアを一瞥すると、秘書としての装備の確認を終えた。
閉ざしていた扉を開ければ、真剣な瞳を書類へと眼を向ける拓海を捉えて。
「社長、…時間でございます」
「分かった…、行こうか」
ドキリと急上昇する熱を抱きながらも、誤魔化すように一礼をした私。
颯爽とジャケットを羽織るポーカーフェイスの彼に、痛みを帯びていく心。
そんな感情には眼を瞑りたくて、先に社長室を退出しようと歩み始めた…。
「佐々木さん、ちょっと待って」
「・・・っ」
すると逃げようとする私を制して、ジャケットの内ポケットを探った彼は。
小さなアトマイザーを手に、私の頭上へとミストをプシュッと噴射した。
たちまち辺りには、爽やかで甘い香りが立ち込めていく・・・
「佐々木さんは俺の秘書、だろ…?
アイツの香りがするのは気に入らない」
「・・・っ」
色をなしたブラウンの瞳で見下げられ、ホワイトムスクの香りにも包まれれば。
このドクドクと煩い鼓動を止める術なんて、私にはナイのに・・・