続きは、社長室で。2
ミストを纏った私を確かめるかのように、グッとキョリを縮めたあとで。
「これでもう、大丈夫だろ…」
「――っ」
自嘲した笑いを浮かべつつ、どこか満足気な表情を見せてくれる拓海。
桜井さんからフレグランスをかけられて、数時間が経過していたせいか。
それともキモチの強さからか、身体はもう拓海の香りで占領されていた。
「…ありがとう、ございます…」
「そう言って貰えると助かるな?」
「ッ・・・」
たとえ義務的だとしても、笑い掛けられれば顔へと熱が集中していく…。
何も知らナイ貴方から齎されるモノに、どうしても戸惑ってしまうけれど。
それでも愛おしいヒトの存在と香りで、強くなれそうな気がするの…――
「東条くん、どういうつもりだ?
わざわざ“大事な秘書まで”同行させるとは、俺への当てつけか――?」
「・・・っ」
闇に葬ったアノ日以来となるTS商事へ、恐怖と戦いながらやって来たものの。
表裏のある人物と対峙をすれば、冷たい言葉と視線がグサリと突き刺さった…。
後藤社長が齎すモノが、何かをかき乱す予感だけを走らせつつ・・・