続きは、社長室で。2
敵に回したり涙を見せてはイケナイ相手だと、身をもって体感していたけれど。
非力なせいで勝算のナイ状況は苦しくて、ドロドロした憤りが募りゆくから…。
小刻みに震えていた身体も限界に達し、瞳から涙が零れかけていたのに・・・
「どういう意味だ――」
「っ・・・」
ブルッと身震いさせるほど裏面だけの人格を現して、睨みをきかせる後藤社長。
私の涙線が決壊する寸前のトコロで、ピタリと止まったのも致し方ナイだろう。
向けられる視線は、私が守りたいヒトへと一点に注がれているのだから。
それは息をするのも憚られるほど、ピンと張りつめたトキが流れる中で。
すべてを切り裂くように、余裕有り気に一笑した拓海へと…――
「その質問にお答えする前に…、懲りない貴方にお尋ねしたい」
「っ、何だと!?」
優雅な物言いの愛おしいヒトに、牙を剥かんばかりの勢いで後藤社長が返す。
「先ほど貴方が発した“数々の戯言”は、誰に向けたモノかと…」
「…ソレを敢えて聞く意味は?」
私がチラリと隣を窺い見れば、アノ日と同じ鋭い眼差しを向けて対峙していた。
「“貴方と同じ行動”を、私も取らせて頂く為ですよ――」
ベルガモッドの勢いを失せるように、ホワイトムスクの香りが花舞いながら…――