続きは、社長室で。2


拓海の言葉にイチイチ反応し、バクバクと鳴り止まぬ鼓動は高鳴りゆくけれど。



何も出来ナイ非力さが悔しくて、私は膝上でキュッと拳を握っていた…。




「ほぉ…、その憮然たる自信は何処からくるのか…。

その綺麗な顔で、猿芝居でもするつもりかな――?

隣に座る、身体だけが取り柄の秘書でも使って…」


「ッ――!」


焦点が定められずにいれば、また怒りに震えたくなる言葉を吐き捨てられる。



それでも何も言い返せず、悔し紛れに眉根を寄せて睨むだけなんて…。




「それとも…、俺に彼女を献上するのか――?」


そんな私を尻目にいやらしく一瞥しながら、ハハッと高らかに笑い始めた。



その後藤社長が動けば、ソファのスプリング音がギシッとやけに煩く響くから。



長い足を組み替えた踏ん反り返らんばかりの姿勢は、傲慢な人柄を体現する…。




「無きにしも非ず(あらず)・・・

先ほどの彼女への侮辱は、東条に向けたものでしかありません。

本気を出した東条グループを敵に回せば、どうなるか…。

仕留めかねた分も合わせて、ご体感なさいますか――?」


「っ・・・」


拓海の発言はスナイパーの如く、後藤社長を射るような声色だというのに。



震えていた肩へとスッと伸びてきた手で、不謹慎に鼓動が高ぶってしまう…。




愛おしい人がその手に、キュッと力を籠めて引き寄せてくれるから・・・




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