続きは、社長室で。2


対峙する相手の鋭い視線をヒシヒシと感じながらも、意識は奪われナイでいた。



肩に置かれたままの手の温かみが、私の凍てついた心を沸騰させていくから…。




「もう大丈夫だ…」


「…っ、社、長…」


鬼気とした空間の中で鼓膜を揺らしたのは、愛おしい清涼さを持つ拓海の声。




この声色が私にどれほど安心感を齎すのか…、そんな心情などお見通しのように。



グッと縮まったキョリに伴って、ふわりとホワイトムスクの香りが漂う中で。



寂しがりな身体がトンと弾みをついて落ち着く先は、大好きな広い胸だった…。




「っ、茶番はまっぴらだ――

貴様は蘭を寄越してまで、俺をコケにするつもりか!

東条の本気とやらは…、此方も本気を出した場合を考えての発言だろうな?」


怒りを露わにして、テーブルを破壊しそうな勢いで拳を叩き置いた後藤社長。




「どうやら、先ほどの言葉をお忘れのようですね…。

このような事を申すのは、東条に育つ者として倫理に反するが・・・

今の東条が本気を出せば一国を握れるほど、後藤家とは格が違う。

すなわち、TS商事を手玉にする事ほど容易いモノはありません」


「っ、何だと――!?」


冷たい声色を響かせてサラリと言い放った拓海に、反論しかねている後藤社長。




「懲りない貴方に、最後通告をしますと…。

蘭への侮辱は、俺ないし東条への冒涜とみなされますが?」


「ッ――!」




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