続きは、社長室で。2


どうして…、ねぇどうして・・・?


この疑問符さえも口に出せぬまま、拓海の胸へと寄り掛かっている私。




愛おしいヒトの呼び名の変化に驚かされて、貴方の真意が全く見えナイ…――




「ッ・・・」


すると私の身を引き寄せていた手が、しなやかな動きで髪へと移り変わった。



掬うように撫でられては、錯乱状態の鼓動もオーバーヒート寸前となるから。



そう騒ぎ立てる心情が、貴方の本意を読み取る力など失せてしまうのに…。




だけれど緊迫する状況においても、なぜ悠然としているの…?




「欠けていた月も、やがては満月へとまた戻るように・・・

願い続けた満月の前夜である、小望月(こもちづき)の状態から変化したものの。

ヒト欠けらの大切なモノを、導き出させた起因が貴方とは…。

何とも自身を愚弄したい気分です・・・」


私を決して離すコトなく、ギュッと胸の中に収めたままで清涼な声色が響いた。




昔から拓海の言葉には、節々で意図するモノがあると解りながらも。



頭のデキが違う私には、ソレが難しすぎてよく理解出来ずにいたの。



フッと一笑する貴方に縋りつきながら、今も貴方の本意が見えナイよ…。




「いいか…、俺は回りくどい言い方が最も嫌いだ。

いい加減にハッキリして貰おうか?

“東条の本気”とやらを提示しがてらね――」


「その言葉…、あとで忘れたとは言わせませんよ?」



吐き捨てるような態度で苛つく後藤社長に、拓海は再び挑発的に嘲笑した・・・




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