続きは、社長室で。2


その確固たる自信を漲らせる謂われは、何処にあるというの…?



貴方の言葉に何を秘めているのか聞けぬ状況で、私はただ固唾を呑むだけ。



囃し立て続ける心音が、歓喜のモノへと変化するようにと願いながら…――




「弁解の余地を与えるつもりは、甚だ(はなはだ)ありませんが…。

謝罪なさるのでしたら今のうち、ですよ?」


静まり返った空間に響くのは、拓海の清涼な中にも自信を漲らせた声色で。



そんな彼を傍らで窺い見ようが、何も読み取るコトなんて出来ナイよ…。




「ハッ、馬鹿馬鹿しい――

前からその余裕ぶった態度が目障りだ…!」


「ッ――!」


相当イライラしているのか、後藤社長が恐ろしい剣幕で睨みを利かせた。



その鋭い眼差しは恐怖を植えつけるから、反射的に拓海に縋りついてしまう…。




「…貴方は“欲しいモノは是が非でも奪う”とも、信条に掲げてみえますね…。

欲望任せに怯えさせる事が、正攻法と言えるのでしょうか?

ちなみに私の信条は、“欲しいモノはただひとつ”にしておきます…。

“ソレに手を出されれば全力で敵に回る”という、意味合いも籠めてですが――

まだ蘭を諦めようとしない、目障りな貴方を追い詰めるほどにね…」



「え・・・?」


クスクスと嘲笑しながら、絶対零度の視線を前方へと向ける拓海。



後藤社長が言葉を選んでいるのか、流れゆく間(ま)が緊張感を募らせる…。




ホワイトムスクの香りに抱かれつつ、私は事態を呑み込めずにいたの・・・




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