続きは、社長室で。2
その名前を耳にした途端、眼前のネクタイを眺めていた私の視線が上へと向く。
そっと見上げれば、前方の標的を一点に捉えるスナイパーの拓海の姿が…。
「その名前を出して、どうするつもりだ?」
「フッ…、いい加減に白々しいですね。
私が乗り込む時は、“ソレ相応の準備をした時”だとお解りでしょうに…」
「ッ・・・」
標的に対して嘲笑する愛おしいヒトのスーツに、堪らずギュッとしがみつけば。
「蘭…、ごめんな――」
「・・・え?」
「もう少しだけ…、待っていてくれ…」
「・・・っ」
すると瞬時にこちらを見下げた彼が、そっと私の片頬へと手を置いてくれて。
憂いを帯びた表情を見せられては、尋ねたいフレーズも消え失せてしまうの。
貴方を苦しませるのは、たとえ自身であっても許せないのよ…――
ぎこちなくコクンと頷いて、彼のスーツに凭れかかるように再び縋りつくと…。
「いい加減にしろ――!
ワザワザ見せつけるとは鬱陶しい…、大概にしておけよ…?」
そのトキ怒号とともに、ギシッと革張りのソファを豪快に立つ音が響いた。
再びピンッと、張りつめた空気が一気に蔓延していく・・・