続きは、社長室で。2
対峙の、始まり。
まるで真っ暗闇へと引きずり込まれたようで、不安が立ち込めてしまう。
背を向けている後藤社長の表情が、最上級に訝しげなモノだと想像がつくほど…。
「陰でコソコソと、嗅ぎ回っていた事には気づいていましたよ。
貴方が初めて本気を見せた、蘭を諦めきれていないとも・・・
そんな中で、ひとつの布石を見つけられたのですよね?」
震えてしまう身体を宥めるように、大きくて温かい手が私を引き寄せていて。
その手つきとは裏腹に、標的へと向ける声色はスナイパーそのもの…。
後藤社長が…、まだ私なんかを諦めていない…――?
「ソレが“遠藤 涼太”だと、言いたいようだな?」
え・・・?
どこか観念したような声が届き、ドクッと大きく脈打つ私の鼓動。
「ご明瞭・・・
貴方は新人銀行員の彼に、色々とプレスを掛けたようですね」
「…立場を解っていての発言だろうな?」
「…仰いで天に愧じず(はじず)――
何でしたら、すべての発言を録音頂いても構いませんが?」
「ッ・・・」
拓海が淡々と述べる数々のモノに、疑問符ばかりが募ってしまう。
※仰いで天に愧じず…心にやましい事が無く、潔白である事。