続きは、社長室で。2


暴力沙汰には及ばぬものの…、対峙する2人の発する空気が一触即発状態で。



向かいの相手に対しての恐怖心と、知らぬ間に拓海を牽制していたのか。



拓海が握り締めたままの手を、縋るようにギュッと強く握り返していた…。



すると愛おしいヒトが私を離すコトなく、反対の手をスーツの内ポケットを探ると。



向かいの後藤社長に見せるように、大理石のテーブルへとあるモノを提示した。



「っ・・・」


ソレは拓海と綺麗な女性が、まさに唇を重ねている最中の写真で・・・



瞬時にチラッと見えた写真で苦しさに襲われ、グッと胸を締めつけられる私。




その一報では後藤社長の顔色が、ごく僅かに変化していたとも気づかずに…。





「ソレに、見覚えがおありでしょう。

立川経由で入手した写真から…、よく此処まで精巧なコラージュを作れたものです。

それを貴方は遠藤くんを介して、蘭の動揺を誘おうとした。

新人行員の彼の処遇など、“後藤の名ひとつでどうとでも飛ぶ”と脅したのでしょう。

蘭が信頼するであろう遠藤くんなら、必ず揺さぶりを掛けられると踏んでね…。

“こんな写真が世間に出れば、東条家は…”その様なプレスをする算段だった。

どうでしょう、事実と相違はありませんよね――?」



「う、そ・・・」


自信の潔白を主張しつつも、じつに淡々と告げる愛おしいヒトの言葉の数々には。



不思議とパニックに陥りそうな心も落ち着き、苦しみがスッと取り払われていく…。




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