続きは、社長室で。2
秘書半人前の私でも分かる…、A銀行からの融資が停止すれば・・・
悠然と構える拓海が差し向けたモノには、隙など見つかる節もなくて。
「東条社長、どうか…――!」
我慢ならずに席を立った立川元部長が、どうにか拓海を牽制しようとすれば。
「悪いが、今は経営者同士での話し合いの場だ。
口を挟まないで欲しい」
「っ…、かしこまりました」
手をスッと前へ掲げると、ソレさえも容易くストップさせてしまう剣幕で。
「冷静沈着で頭のキレる貴方なら、結論はもう出ていますよね…?」
「な、にが言いたい…」
そのまま一点に捉え直せば、なおも睨みを利かせる標的に一笑した。
「貴方のご希望通りに、東条が動けばどうなるのか・・・
A銀行に融資停止を取り下げる事も、はたまた会社を潰す事も簡単なモノ…。
すなわち後藤家の権力など、既に東条家の手の内というコトですよ」
「き、さま…、卑怯なっ――!」
「その言葉…、そっくりお返しいたしますよ。
蘭をはじめとして、立川や遠藤くんにした事への当然の報いでしょう。
東条に伝わる訓辞に、“目に見えぬ物こそ、真の生きる糧”という一文があります。
人の心は物ではない…、弱者に対して、権力や金を振りかざす事こそ愚かだと…。
貴方と対等に位置する者として、相応に実力行使させて頂きましたが・・・
傍若無人の身勝手さが招いた、必然的な末路ではありませんか――?」
淡々と話す拓海は泰然としていて、東条の風格を漂わせていた・・・