続きは、社長室で。2
そのTS商事の融資などの件は、バトンタッチした桜井部長に任せるコトとなり。
彼から受け取ったキーを手にした拓海と、アウェイの社長室を退出しようとすれば。
「蘭っ…、待ってくれ――!」
「え・・・?」
ソファに腰を下ろしていた涼太くんに、いきなり呼び止められてしまった。
そのまま立ち止まった私たちの許へと、彼はそそくさと駆け寄ってくる。
「今度会う時は…友達だよな…?」
神妙な顔つきをしている涼太くんが、不安げに尋ねてきたのだけれど。
「へ?あ、あたり前だよ…!
ていうより、今までだって友達だよね…?」
「あ、あぁ…、そうだな…!」
「良かったー、凄く心配していたの」
「はは・・・」
変な聞き方をしてくれたのは、涼太くんらしい気遣いだったのだろう。
だって巻き込んだ私の方が、もう彼とは疎遠になりそうで不安だったから…。
そんな涼太くんと笑い合っていれば、グイッと腰元を引き寄せられてしまう。
「遠藤くん、今回は君のお陰で助かったよ。
蘭の婚約者として、礼を言わせてくれ…」
「ッ・・・」
そんな中でも愛おしい清涼な声色が、私の意識をすぐに攫ってしまう・・・