続きは、社長室で。2
吐露の、始まり。
涼太くんと至近距離で対峙しているというのに、頬の紅潮は止められナイ…。
しなやかな指先とは違い、私を強引に引き寄せる腕の力は強靭なモノで。
フワリと鼻腔を掠める、ホワイトムスクの香りが一気に心臓の音を煩くさせるの…。
「ストレートな言葉でないと、気づかない性質で申し訳ないね…?」
冗談めいて話しているというのに、声色はいつもより低く感じる拓海。
「ハハ…、やはり東条社長には敵いません。
蘭・・・幸せになれよ」
「…うん、ありがとう…」
そんな私たちに笑う涼太くんにつられて、自然と笑みが零れていた…――
ようやくTS商事から脱した私と拓海は、そのままフェラーリへと乗り込んだ。
主君が運転手として帰還したせいか、真っ赤なフェラーリのエンジン音が軽快で。
地面を這うように走行するスポーツカーの乗り心地に、ホッと安堵してしまう…。
「どうして…、記憶はいつ…?」
走行中だと分かっていながらも、一番の疑念をぶつけたくて堪らなかった。
「ごめんな・・・
乱気流の事故のあとで、眠りから目覚めた時…。
蘭を認識出来ずに、酷い態度を取ってしまったのは事実だ…」
「ッ・・・」
自分で尋ねておきながら、“認識出来なかった”事実に苦しみを覚えてしまう。