続きは、社長室で。2
“結婚しよう、蘭・・・”
これが愛情から、愛証へと変わった瞬間だった――
長い睫毛を伏せて、規則正しい寝息を立てている貴方。
一緒に寝ていたコトが、信じられない・・・
それでもシーツ越しに感じる、昨夜の余韻を思い起こす素肌の温かみ。
眠っているというのに、私を離そうとはしない腕の力。
包まれたように錯覚するほど、甘いホワイトムスクの香り。
これらすべてが私を、現実へと誘ってくれるの――
「っ・・・」
そうしてジッと見つめていると、突然バチッと見開いた瞳。
開眼した瞳はもちろん、優しいブラウン色をしていて。
「おはよ、蘭…」
「お、おはよう…」
名前を呼ばれただけ…、ただそれだけのコトで急上昇する体温。
「寝てると思っただろ?」
「っ・・・」
驚く私にフッと一笑すると、片手で漆黒の髪をサラッとかき上げた。