続きは、社長室で。2
刻々と変わるデジタル表示が、地上への到着をカウントしている。
また愁然に晒されるまで、あと少しだと…――
やっと貴方と幸せになれる処にいるのに、どうしてだろう…。
どうして私は…、逃げようとしているの・・・?
視界をゆらゆらと揺らすモノを、メイクの崩れを気にしつつ拭った。
公然で泣いていてはダメだと、いつか言われた事が脳裏を過ぎったのだ。
無能で役立たずな私が出来るのは、今はコレだけだから・・・
到着を告げる音のあとで、スーッとエレベーターの扉が開いた。
ロビーを駆け抜けようとしたのが、さらなる選択ミスだったらしい。
コツコツと響き渡るヒール音が、今日だけは恨めしく思えた…。
“あっ、佐々木さんだ!”
“アノ社長を靡かせたらしいし…、ヤってみてぇよな”
「っ・・・」
周りに気づかれてしまった私への反応は、想像以上のモノで…。
居合わせた社員から向けられるのは、好奇の眼と冷ややかな眼。
耳に届いてくるのは、あまりにも居た堪れない言葉の数々…。