続きは、社長室で。2
「ハァ・・・」
エレベーターに乗り込むと、大きな溜め息をついてしまう。
嫌な予感が的中した事で、消化不良な気持ちを吐き出すように…。
“どうせ私はヒマですから!”
珍しく強気な口調で飛び出した蘭は、いま何処で何を考えている?
二度と傷つける事など無い…、そう誓ったばかりだというのに。
どうして蘭の事だけは、上手くいかないのか・・・
それでもエレベーターの到着音が鳴り響けば、切り替える外ない。
【皆を治める者は、感情に惑わされる事なかれ】
この扉の先では、トップとしての泰然さを要求されているからだ。
「社長、こんにちは!」
「お疲れ様です」
いつもと変わらない笑顔を浮かべ、平身低頭の社員と挨拶を交わす。
社員に対して“ご苦労様”とは言わないのが、東条のポリシー。
【周りへの感謝を忘れず、纏う風格はそのままに】
実るほど頭を垂れる稲穂のように、常に低姿勢であるべきという慣わしだ。