続きは、社長室で。2
グイッ――
そのあとで肩に手が回ると、後ろへと引き寄せられた。
「っ・・・」
冷え切っていた心が、ボッと瞬時に点火したように忙しくなる。
振り向かなくても、ソレが誰の手なのか分かってしまう。
先ほどの声と…、ふわりと鼻腔を掠めるのは、甘くて爽やかな香り。
まさに私の心と身体を掴んで離さない、愛しい人のモノだから・・・
「蘭…、誰だよ?」
「っ、あ、この方は…」
すっかり囚われていた私は、涼太くんの存在を忘れ去っていて。
慌てて首だけを動かして、拓海の顔を見ようとしたのだけれど。
「婚約者だけど…?」
「っ――」
さらにグッと引き寄せられて、ホワイトムスクの香りに包まれた。
「ハッ、婚約者!?
オマエ、結婚すんの?」
「っ・・・」
眼を丸くさせている涼太くんの問い掛けに、答えかねてしまう。