続きは、社長室で。2
拓海に対して、私が遠慮してる…?
ブラウンの瞳を捉えたまま、先ほどの言葉が一気に取り巻き始めて。
「っ・・・」
戸惑っていると頬に手を置かれて、ドキリと鼓動がひとつ波打った。
「蘭…、前にも言っただろ?
そうやって何も言わない事が、相手を苦しめるだけなんだよ。
苦しむオマエに何もしてやれない俺は、どうすれば良い…?」
「っ――」
諭すように齎されたフレーズに動揺して、ポロッと涙が零れてしまう。
そんな私の頬から手を外すと、しなやかな指で優しく拭ってくれた。
「…後藤さんと結婚するって言われた時・・・
何度も理由を尋ねようが、蘭は答えなかっただろ?
あの時は“材料”だけが、頼みの綱だったんだ…」
「っ・・・」
“後藤社長”の名前を耳にしただけで、息苦しさを覚えてしまう。
あのトキはもう…、その時を生きるコトすら辛くて、苦しくて…。
報われない想いであっても、傍にいたいと思い知らされただけだった。
だけれど脅しに屈する外ナイと、後藤社長との結婚を選んだというのに。
それでも貴方は、私を引き寄せてくれた・・・