続きは、社長室で。2
だけれど、私にはどう考えても不釣合いだと思う…。
「蘭ちゃん、貴方の買い物なのに…。
気に入った物は無かったかしら?」
手に持っていたお洋服を戻すと、ジッと捉えたまま尋ねられてしまう。
「い、いえ・・・
ただ、高級店は初めてですし、その…」
優しい奥様に失礼の無いようにと、言葉を選んで慎重に返した。
拓海に送り届けて貰った翌日、奥様に呼ばれてお屋敷へと伺った私。
どんな“しきたり”について学ぶのか、密かに心配していたというのに。
早々にお家から連れ出されて、車で向かった先は銀座の高級デパート。
今は奥様と秘書兼SPの近藤さん、そして私の3人でお買い物をしているのだ。
本来なら東条家には外商さんが見えて、買いに来る必要は無いのに…。
「あら、値段を気にしてはダメよ?
寧ろ、これが“しきたり”の1つでもあるから」
「え・・・?」
値段を気にしてはダメって・・・?