続きは、社長室で。2
初めて電車通勤を体験すると、最寄り駅からすぐの社屋へと歩を進めて行く。
日中で人もまばらの電車内だったけれど、恵まれていた境遇を実感した。
本来なら通勤客でごった返す電車に揺られるのが、当たり前なのに。
私は就職してから一度も、その大変さを味わっていなかったのだ。
拓海の優しさに感謝しつつも、如何に甘やかされていたか反省した。
だけれど後悔だけでは、その先へと進めないよね?
これからはネガティブ思考を止めて、貴方の隣で笑っていたいの…。
そう思いながら、眼前の“拓海キャッスル”を眺めていた。
因みに“連絡しろ”と言われていたけれど、してイナイ。
勢い任せにやって来たし、社長室にいると聞いていたからだ。
自分に都合良く結論づけると、ヒール音を鳴らして歩を進め始めた。
会いたくて、抱きついて、ありがとう…、そう伝えたいの…――
だけれど想いを乗せて進めていた足を、ピタリと止めてしまう。
拓海キャッスルの入口から出てくる、2人の姿を捉えて・・・