続きは、社長室で。2
お花好きで知られる彼女が、昔は生け花が苦手だったとは意外すぎて。
生け花のように凛とした完璧な佇まいからは、まったく想像出来ない…。
「でも、不思議なものよね。
まさか生け花の時間を、一番好きになるなんて…」
生け花では不等辺三角形を構造基本として、草花の生命力などを表現する。
アンバランス形を保ちつつ、草花が生きて見えるのは力量がある証拠だ。
「それは、どうしてですか…?」
真っ白な手で順々に生ける姿に魅入りつつ、思わず尋ねてしまった。
「フフッ、“しきたり”の言葉と時間のお陰かしら?
蘭ちゃんにも、いずれ解る時が来るわ」
「はぁ・・・」
優しい微笑を返されて、肝心の答えは聞けず仕舞いだったけれど。
理沙子さんに近づける日が来れば良いなと、そう思えたの…。
「さっき、お袋から電話があったよ。
蘭は生け花の師範になれる!ってね?」
「そ、そんな・・・
理沙子さんてば冗談がすぎるよ…」
今日もまた、慌しく一日が終わりを告げようとしているけれど。
電話を通した清涼な甘い声色は、眠気をスッと取り除いてしまう。