続きは、社長室で。2
日中は鳴らず仕舞いだった携帯電話を、握り締めて眠ろうとしたトキ。
突如始まったバイブの振動が、落胆していた心にボッと火を灯したのだ。
その優しい声を聞くだけで、愛おしさが増して、グッと会いたくなるの。
貴方に“蘭”と呼ばれると、安定剤を処方されたようにに心が落ち着くの。
なのにアノ日見た光景だけは、頭の片隅から追いやれナイよ・・・
「ハハッ、楽しそうだし安心した」
「うん…、毎日楽しいよ?」
もの凄く忙しいと分かっているから、“寂しい”と言えないの…。
「へぇ、俺と会わなくても平気…?」
「っ、そんな…」
艶めいた声色の変化とともに、核心を突く言葉が一気に心音を高めた。
「俺は限界なんだけど…」
「っ・・・」
“私なんて離れたトキからよ…”
思わず出そうになった台詞を、グッと呑み込んで耐えてしまう。
「蘭…、外見てくれる?」
その言葉に頷いてから、慌ててカーテンを引き窓を開け放ってみると。
「っ――!」
愛おしいヒトのシルエットが、鈍い街灯の明かりに照らされていた・・・