お姫様と7人の王子様
クリスマス(ティック)
ティックとアリスのホワイトクリスマス
some time or other
「ルイ様今から時間ありますか?」
クリスマスの日、雪が深々と降る中、ティックに話し掛けられた。
「別に何もないけど……。」
こんな寒い日にすることなんて何もない、やるとしたら元の世界では珍しい雪を見るくらいで十分だ。
「それなら、来て欲しい所があるんですよ」
そう私に話し掛ける彼、その姿を見てみると、スキーでもするのかとつっこみたくなるような厚着をしていた。
「ルイ様……構いませんか?」
「いいけど……。どこに行くの?」
「それは着いてからのお楽しみです。僕は出発の準備しているので、用意できたら声をかけてください」
無邪気な笑顔で言ってから、外へと向かった。
だから自分より年上とはいつも思えない。
そんな彼の言葉に促され、私も彼同様厚着に着替え外に出ると、そこではティックがバイクのタイヤにチェーンをまいていた。
ここにバイクがあるのも不思議だが、それに加えて彼が運転するなんて不釣り合いだ。
「クス……」
笑いたくなるのをこらえる。
ここで笑ってしまったら不機嫌になるのは明白だ。
"可愛い"の一言やそれを意味する言葉は彼に対して禁句なのだから。
「どうしたんですか?笑いを堪えているみたいですが」
気付かれたようで、彼はすべてを見透かしたような拗ねたような口調で言う。
「えっあっ……。その……雪が綺麗だなぁと……」
苦し紛れの一言だが彼の気分を反らすのにはちょうど良かった。
「そうなんですか?それなら今から行くところはもっと綺麗ですよ」
微笑みながら言う。
"ブルルル‥‥。"
彼の声に重なってかかるエンジン音。
どうやら準備がととのったようだ。
「後ろに乗って下さい」
そういいながら私にヘルメットを渡した。
私は彼から受け取ったヘルメットを被ると彼の後ろの席に座った。