お姫様と7人の王子様
彼の目の前では視線を少し上にしながら落ちてきた花びらを見る縲。
落ちてくる花びらがまるで桃色の雪の様に彼女のまわりを綺麗に色づけていく。
妖精や天使なんて子供っぽいと思っている彼は普段絶対使わないが、その時はまるで彼女がそういう神秘的な存在に感じた。
「綺麗だよね」
縲がボウの方向を向くと自然と二人の目線が合う。
その瞬間彼の顔がゆでだこのように真っ赤になった。
彼のことだからすぐさま生意気な事を言うと思っていた縲は、彼の予想外の行動に戸惑いつつも、微笑みながら彼から発せられる次の言葉を待っていた。
(いつも優位に立つのは僕のはず)
彼は自信家だった。
彼自身の能力がそうさせていたのかもしれないが、自分は縲よりも頭が切れるし、年下とはいえ、男なんだから縲よりも体力はあるはずだ。
それなのにただ見つめられただけで赤くなったのがとても悔しく感じていた。
「そうだね」
そのせいかいつもの生意気口調ではなくすこしぶっきらぼうに言うと、プイッと縲から目線を外し、先程までお茶を飲んでいた席へと戻っていった。
「何しているの?」
相変わらずわけがわからない……そんな風に思いながら縲はそんな彼の態度を怪訝な表情で見つめていた。
「よいしょ」
そんな縲に対して、彼は自分の背くらいの高さのいすを持ち上げると、木の前まで持ってきた。