【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
今となっては、もうずいぶんと昔のこと――どちらの帝が今上であらせられたころかも、定かではありませんが、そのころに、たいそう美しい青年がおりました。

その男、名を、藤原親就(ふじわらのちかなり)と申します。

左近衛府正三位(しょうざんみ)少将――左少将殿(さのしょうしょうどの)、或いは、笛藤殿(ふえのふじどの)などと呼ばれる都人であられたこの方の、恋のお話をいたしましょう。
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