【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
そこで、朝露は、ようやく自身のお役目を思い出しまして、しずしずと文箱を差し上げまして、

「私は、名もなき文遣いなれば、こちらの西の方様に、我が主よりのお文をお届けにあがりました」

と、つかえもあやまちもせずに、教えられたとおりの口上を述べますのは、この朝露の利発さでありましょうが、やはり、どことなくぎこちなさの感じられるのを、若者は、不思議にお聞きになるのでした。
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