バクチの樹への送りうた
緑子【りょくこ】
子供が生まれるわ。
喜ぶ皆。
子供が暴れてる。
耳をすます家族。
子供が生まれたわ。
顔をゆがます。
奇声をあびる。
湯の中を見るとお湯じゃなかった。
緑の物体が、ブヨブヨとした粘液のものがゆらいでた。
みんな口を開けたまま言葉をなくしてる。
ずっと目をそらすことを許してくれなかった。
涙がでてた。
緑のものがゆれるたびに。
緑のものから突然 手のようなものがでてき
赤ん坊の奇声を出す。
怖くて動けなくて涙がでた。
だけど赤ん坊はいた。
ちゃんと生まれた。
赤じゃなくて緑だった。
男の子。
無口で目がくっきりし、よく上を見る子。
みんなは気味悪がってた。
私だって…。
でも私の子。
殺すわけにはいかない。
この子には何故か爪がなかった。
何故か気になった…当たり前。
この子は指がスラッと長かった。
きれいだった。
いつかこの子はケガをした血がトロトロと透明で水のようできれいだった。
この子は私の母乳と常温の水と薬草しか食べなかった。