脱走犬物語

やがて近所のスーパー、ラッキーの前に着きました。ボクが一度つながれたあのスーパーです。ラッキーでは、ママが何年か魚屋で働いてたこともあります。あの時のママの手はいつも魚くさくて、ボクはおいしそうだなとクンクン匂いをかいでいました。あの時のママは、いつもくたびれていて、仕事帰りにボクをひとなですると、いつも2Fの寝室ベッドでダウンしていました。けんちゃんが、東京の大学に行くちょっと前から、ママは魚屋で働き始めました。なんか、東京でとても悪いことでもしてしまったのでしょうか、けんちゃん。
スーパーの前に立ってみると、遠い昔のママの香りがします。店に入らなくても外からでもなんとなくわかるんです。けど、今はもうママの手が魚くさいことはありません。
しばらく駐車場を眺めていると、見慣れないおばあちゃんがあたふたしながら、出てきました。ボクみたいにビッコをひきながら、それでも懸命に走っています。と、おばあちゃんの後ろから、ものすごい怒った顔をしたおじさんが走ってきます。おじさんは、おばあちゃんの手を乱暴にとると、なにやらまくしたて、あっという間にスーパーの中へと二人は入っていきました。おばあちゃんをいじめるなんて考えられません。ボクは一度けんちゃんのおばあちゃんに会ったことがあるけど、とてもいい人でケーキを出してくれました（けど、食べさせてくれなかったけどね）世の中には、悪いおばあちゃんもいるのでしょうか？
人間のやること考えることは時々よくわかりません。